神の深い旨を信じ、神の長い慶祝を期待するが故に、こゝに、うつくしい儀禮の詞を綴ります。
御同様、この國における宗教学の形態を、更めねばならぬときに際会いたしました。社会人としては、悲痛きはまりない境遇をも経験いたしました。が、書斎人としては、努力のかひある時期に遭遇したものと言ふことが出来ます。
目下、在来の倫理神道と別れて、宗教神道の地固めに勤しんでゐる我々の作業は、記念すべき労苦として、必後世からは見られることになるでせう。
吾々の向学の情熱は、きっと異常な速度を以て、新しい視野を神道教の上に開いて、將来の規範を立てることになるでせう。
これは、吾々の希望でありますが、同時に自覚を告げることにもなるのです。
この大きな学的機会に、協力のよしみをまじへることが出来るのは、学者の本懐之に過ぎるものゝないことを、しみ/″\感じる次第でございます。
折口信夫「発刊のことば」『神道宗教』第1号, 1948年, 1頁